予防医療とは?予防医学との違い、今すぐできる実践例を解説

「健康診断の結果が気になる」「将来、病気で苦しみたくない」という不安を抱える方は多いのではないでしょうか。こうした不安に答えてくれるのが「予防医療」という考え方です。

予防医療とは、病気になってから治療するのではなく、病気を未然に防ぎ、あるいは早期に発見・対処することで、健康な状態をできるだけ長く保つための医療的アプローチです。近年、医療費の増大や高齢化が進む日本において、予防医療への関心はますます高まっています。

この記事では、予防医療の基本的な考え方から、日常生活でできる実践例、DX・AIを活用した最新トレンド、そして企業における取り組みまで幅広く解説します。自分や家族の健康、あるいは組織の健康経営を考えるうえで、ぜひ参考にしてみてください。

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 予防医療とは?基本的な考え方と「3つの段階」

予防医療とは?基本的な考え方と「3つの段階」

予防医療とは、疾病の発生・進行・重症化を防ぐことを目的とした、医療・保健・公衆衛生にまたがる総合的な取り組みです。「病気になってから治す」という従来の医療モデルに対し、「病気になる前に防ぐ」という発想の転換が根底にあります。

予防医学との違いは?

「予防医療」と混同されやすい言葉に「予防医学」があります。両者は密接に関連していますが、ニュアンスが異なります。

予防医学は、疾病の原因や予防に関する研究を行う学問領域を指します。疫学や統計学を用いて「何が病気を引き起こすのか」「どうすれば防げるのか」を科学的に解明する学術分野です。一方、予防医療はその知見を実際の医療・保健の現場に応用し、具体的な介入や支援を行う実践的な活動を指します。

予防医療の3つのフェーズ|一次・二次・三次予防

予防医療は、介入するタイミングや目的によって、大きく3つのフェーズに分けられます。それぞれが連携することで、健康寿命の延伸に寄与します。

一次予防(発症予防)

病気が発生する前の段階で、そもそも病気にならないよう予防する取り組みです。食事・運動・睡眠といった生活習慣の改善や、予防接種がこれにあたります。

二次予防(早期発見・早期対処)

疾病が発症した初期の段階、あるいは発症前の潜在的な状態を早期に発見し、適切に対処する取り組みです。健康診断や人間ドック、がん検診などが代表例です。病気の進行を食い止め、重症化を防ぐことが目的です。

三次予防(重症化・再発予防)

すでに疾病を抱えている人が、症状の悪化や合併症の発生、再発を防ぐための取り組みです。リハビリテーションや服薬管理、生活指導などが含まれます。

この3段階の予防を組み合わせることで、一人ひとりのライフステージや健康状態に合わせた、きめ細かな健康管理が実現できます。

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 今日から始められる予防医療の3つの実践例

今日から始められる予防医療の3つの実践例

予防医療と聞くと、専門的なイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、日常のちょっとした習慣が、将来の健康を大きく左右します。明日からすぐに取り組める実践例を3つ紹介します。

①食事・運動・睡眠を整えて生活習慣病を予防する

一次予防の核となるのが、生活習慣の改善です。生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常症など)の多くは、日々の食事・運動・睡眠の積み重ねが大きく影響しています。

【食事】

主食・主菜・副菜を揃えたバランスの良い食事を心がけましょう。成人の食塩摂取量は1日平均9.6gで、健康日本21(第三次)の目標値である7g未満を上回っており、減塩の意識が特に重要です。

出典:厚生労働省 令和6年「国民健康・栄養調査」の結果

野菜を先に食べる「ベジファースト」や、腹八分目を習慣にすることも、血糖値の急激な上昇を抑える工夫の一つとして注目されています。

【運動】

特別なジム通いが必要なわけではありません。厚生労働省のガイドラインでは、64歳以下の方は1日8,000歩、65歳以上の方は1日6,000歩の歩行を目安としています。通勤中に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うといった日常の工夫が、生活習慣病の発症リスクを着実に下げます。

出典:厚生労働省 健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023

【睡眠】

睡眠不足は肥満や生活習慣病との関連が指摘されており、認知機能との関係についても研究が進められています。寝室の温度・湿度を整え、夕方以降のカフェイン摂取を控えるなど、睡眠の質を高める工夫を取り入れましょう。

②健康診断・人間ドックで病気の早期発見につなげる

二次予防の代表例が、健康診断・人間ドックの活用です。特定健康診査(40〜74歳対象)や職場の定期健診を通じて、血圧・血糖値・コレステロールなどの異常を早期に発見することができます。

大切なのは、「受けて終わり」にしないことです。検査結果を単年度で見るのではなく、経年変化として捉えることで、自分の体の傾向が見えてきます。たとえば、血糖管理の指標であるHbA1cが年々上昇しているなら、生活習慣の見直しが急務です。

また、特定健康診査でリスクが見つかった方には、保健師や管理栄養士による「特定保健指導」が提供されます。目標設定や改善計画のサポートを受けることで、数値が改善されるだけでなく、生活習慣病の重症化を大幅に防ぐことができます。

③予防接種で感染症の発症・重症化を防ぐ

一次予防として非常に有効なのが予防接種(ワクチン接種)です。インフルエンザ・肺炎球菌・帯状疱疹など、成人・高齢者にとって重症化リスクの高い感染症に対し、ワクチンは科学的に証明された予防手段です。

特に65歳以上の方への肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌感染症の発症や重症化を防ぐ効果が期待されています。また、帯状疱疹ワクチンは、50歳以上の方の接種が推奨されています。

さらに、個人を守るだけでなく、集団免疫という観点からも予防接種は重要です。多くの人が免疫を持つことで、ワクチンを接種できない免疫機能の低下した人や乳幼児を、社会全体で守ることができます。

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 DX・AIで進化する予防医療の最前線

DX・AIで進化する予防医療の最前線

デジタルトランスフォーメーション(DX)とAI技術の進化により、予防医療は新たな段階を迎えています。「気づかないうちにデータが蓄積され、リスクを事前に察知できる」時代が到来しつつあります。

PHR・ウェアラブルデバイスで健康状態を見える化する

PHR(Personal Health Record:個人健康記録)とは、健診結果・投薬履歴・生活習慣データなど、個人の健康情報を一元管理する仕組みです。スマートフォンやスマートウォッチで日々の歩数・心拍数・睡眠時間を自動記録し、PHRに統合することで、自分の健康状態を継続的に「見える化」することができます。

こうしたデジタルデータの活用は、「ナッジ」としても機能します。スマートウォッチが「今日の歩数が目標を下回っています」と通知することで、無意識のうちに行動変容が促される仕組みです。数値が目に見えることで、健康への意識が自然に高まり、継続的な生活習慣改善につながります。

AIで発症リスクを予測し、個人に合った予防につなげる

AIを活用した疾患リスク予測技術の研究・実用化が進んでいます。たとえば、糖尿病・脳卒中・心疾患などの発症リスクを、数年先まで予測するシステムの開発・実用化が進んでいます。

これにより、これまで「全員が同じ健診を同じタイミングで受ける」という画一的な予防から、「個人のリスクプロファイルに合わせた、精密な予防(プレシジョン・プリベンション)」への転換が可能になります。リスクが高い人には早めの介入を、リスクが低い人には効率的な管理をと、医療資源を最適に配分できる点も大きなメリットです。

オンライン診療・オンライン保健指導で継続的な健康管理を支える

スマートフォンやパソコンを通じたオンライン診療・オンライン保健指導は、予防医療における継続的な健康管理を大きく後押しします。通院の時間的・地理的な障壁が解消されることで、「気になったらすぐ相談できる」環境が整い、早期の受診・介入が促進されます。

特に、特定保健指導のオンライン対応は2018年から認められており、遠隔でも保健師や管理栄養士が生活習慣の改善をサポートできる体制が整いつつあります。些細な体調の変化を早めに専門家に相談する習慣が、三次予防(重症化防止)の鍵となります。

 なぜ予防医療が重要なのか?

なぜ予防医療が重要なのか?

ここで改めて、予防医療がなぜ今これほど重要視されているのかを、社会的・経済的な側面から整理します。

健康寿命を延ばし、自分らしい生活を長く続けられる

日本人の平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)の差は、男性で約8年、女性で約12年(令和4年データ)あります。この差の期間は、医療や介護のサポートを必要とする期間を意味します。

出典:厚生労働省 健康日本21アクション支援システム 生活習慣病などの情報

予防医療によって生活習慣病やフレイルのリスク低減につながれば、この「不健康な期間」を短くできる可能性があります。「長生きするだけでなく、元気に長生きする」——それが予防医療の最大の価値です。

2040年問題に備え、医療費・社会保障費の増加を抑える

日本では2040年には団塊ジュニア世代が全員65歳以上となり、社会保障費の増加が課題になるとされています。2023年度の国民医療費は約47兆円に達しており、今後さらに増加が見込まれます。

予防医療の推進によって、疾患の発症・重症化を防ぐことができれば、受診件数や入院日数の削減につながり、社会保障制度の持続可能性を高める効果があります。予防への投資は、長期的には医療費の削減という形で社会全体に還元されるのです。

早期発見・早期対応で治療の選択肢を広げ、負担を軽減する

がんや生活習慣病などは、早期に発見できるほど治療の選択肢が広く、身体的・精神的・経済的な負担を軽減しやすくなります。たとえば、胃がんや大腸がんは早期発見であれば内視鏡による低侵襲な治療が可能ですが、進行した段階では手術・抗がん剤・放射線など複合的な治療が必要になります。

健康診断・人間ドック・がん検診を定期的に受け、異常があれば放置せず早めに精密検査や医療機関への相談につなげることが、結果として自分と家族を守ることになります。

 企業・社会における予防医療の重要性

企業・社会における予防医療の重要性

予防医療は、個人の取り組みにとどまりません。企業が組織として従業員の健康をサポートすることは、今や経営戦略の重要な柱となっています。

従業員の健康維持が生産性向上と人材定着につながる

従業員の健康課題は、企業にとって大きな経営リスクです。病気による欠勤(アブセンティーイズム)だけでなく、体調不良を抱えながら出勤し、本来の能力を発揮できない状態(プレゼンティーイズム)は、見えにくいコストとして生産性の低下につながります。

経済産業省の資料でも、健康経営の効果としてアブセンティーイズムやプレゼンティーイズムの改善が挙げられています。健康への投資は、従業員の健康維持に加え、企業の生産性向上を支える取り組みとして注目されています。

健診結果には、各検査項目の数値とともに「A」〜「E」などのアルファベット判定が記載されます。一般的な判定区分とその意味は次のとおりです。

  • A:異常なし
  • B:軽度異常(経過観察)
  • C:要再検査・生活改善
  • D:要精密検査
  • E:要治療

基準値内であっても、前年からの数値の動きや、複数項目を合わせた全体的な傾向に注意し、「正常=問題なし」と決めつけずに変化を見る視点を持ちましょう。

健康経営や国の施策が企業の予防医療を後押ししている

国は「健康日本21(第三次)」「健康経営優良法人認定制度」などを通じて、企業の健康支援を積極的に推進しています。「健康経営優良法人」に認定された企業は、社会的評価の向上や金融機関からの優遇措置を受けられるほか、求職者への訴求力も高まります。

企業が取り組める予防医療の具体的施策としては、定期健診受診率の向上・特定保健指導の実施・禁煙プログラムの導入・運動習慣促進のためのウォーキングイベント開催・メンタルヘルスケアの充実などが挙げられます。福利厚生の一環として予防医療を組み込むことが、従業員のエンゲージメント向上にもつながります。

要再検査・要精密検査・要治療と判定が出た場合は、案内に書かれた期限を守って必ず医療機関を受診しましょう。早めに動くことで、病気の進行を抑えられる可能性が高まります。

受診時には健診結果の用紙を必ず持参すると、医師が体の状態を素早く把握できます。「忙しいから」と先延ばしにせず、まずはかかりつけ医や近隣のクリニックに相談することが第一歩です。

 まとめ

まとめ

予防医療は、「病気を防ぐ」という個人の健康づくりから、「社会保障を支える」という社会全体の課題解決まで、幅広い意義を持つ取り組みです。一次予防(生活習慣の改善・予防接種)・二次予防(健診・早期発見)・三次予防(重症化防止)の3つのフェーズを意識しながら、自分に合ったアクションを今日から一歩ずつ始めてみましょう。

また、DX・AIの活用によって予防医療はさらに進化を続けており、個人の健康管理はよりスマートに、より精密になっています。企業においても、健康経営の推進は生産性向上と人材確保に直結する重要な経営課題です。メディカルジャパン展示会では、予防医療・健康経営に関わる機器・サービス・ソリューションを幅広く取り揃えています。最新の予防医療トレンドを体感し、自社や地域の取り組みに活かせる情報収集の場として、ぜひご参加ください。

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監修者情報

監修:浅川 貴介(あさかわ たかすけ)

経歴:
2004年 私立海城高等学校卒業
2010年 私立東邦大学医学部卒業 医師免許取得
2012年 公益財団法人日産厚生会玉川病院
2016年 東邦大学医療センター大橋病院 腎臓内科
2018年 医療社団法人七福会ホリィマームクリニック
2022年 浅川クリニック

所属学会・資格:

  • 医学博士
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本腎臓学会腎臓専門医
  • 日本透析医学会透析専門医
  • 労働衛生コンサ健衛生ルタント(保健衛生)
  • 東京都福祉局認定難病指定医

所属:

  • 浅川クリニック 副院長
  • 合同会社世田谷産業医事務所 代表社員

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