訪問看護指示書とは?
記載方法と交付してもらえないときの対処法

訪問看護とは、看護師が患者さんの自宅に訪問して看護を行うことです。どんどん高齢化が進む日本では、訪問看護の役割は拡大傾向にあり、在宅医療を支えるためになくてはならない存在になっています。

この訪問看護を患者さんに提供するために必要になるのが、患者さんの主治医から交付される訪問看護指示書です。この記事では、この訪問看護指示書の種類や記載される項目について解説します。

 訪問看護指示書とは?

訪問看護指示書とは?

訪問看護指示書とは、患者さんを診察する主治医が訪問看護の必要性を認めた際に、訪問看護ステーションなどに対して交付する文書です。この指示書がなければ訪問看護を受けることはできません。

訪問看護指示書に記載される情報には、以下のような項目があります。

・訪問看護指示期間
・主たる傷病名
・病状・治療 状態
・投与中の薬剤の用量・用法
・褥瘡に関する情報
・装着・使用医療機器に関する情報
・療養生活指導上の留意事項
・リハビリテーションに関する情報
・緊急時の連絡先、不在時の対応について
・医師氏名、医療機関名

 指示書の種類

指示書の種類

訪問看護指示書は、看護の内容に応じて4つの種類が使い分けられます。それぞれの指示書の名前は以下のとおりです。

・訪問看護指示書
・特別訪問看護指示書
・在宅患者訪問点滴注射指示書
・精神科訪問看護指示書

それぞれの特徴について説明していきます。

訪問看護指示書

訪問看護指示書とは、在宅医療において、訪問看護ステーションなどの指定訪問看護事業者が利用者さんに対して訪問看護や訪問リハビリを実施する際に、主治医より指示を受けるために交付してもらう指示書です。

訪問看護指示書には、訪問看護師が把握する必要がある患者さんの基本情報や病名、治療状況、必要な処置が記載されています。訪問看護は介護保険、医療保険のどちらでも利用することができますが、いずれの場合も「主治の医師による指示を文書で受けなければならない。」と定められています。指示期間は最大6ヶ月設定することができます。

訪問看護指示書で行う訪問の特徴は以下のとおりです。

・1日1回
・1回あたりの訪問時間は30分以上90分未満
・週3回まで実施可能
・1箇所の訪問看護ステーションから、1人の看護師が対応

特別訪問看護指示書

特別訪問看護指示書とは、主治医が診療に基づき、急性増悪(急激に症状が悪化すること)や終末期、退院直後などで一時的に頻回な訪問看護を行う必要があると認めた場合に、交付される指示書のことです。指示期間は最大14日まで設定することができます。基本的には月1回のみ発行できますが、重度褥瘡の場合は月2回出すことが可能です。

特別訪問看護指示書があることで、以下のように対応することができます。

・1日に複数回の訪問
・週4日以上実施可能
・90分を超える訪問が週1回可能
・複数の指定訪問事業所(訪問看護ステーションなど)から、複数名の看護師による対応

在宅患者訪問点滴注射指示書

在宅患者訪問点滴注射指示書とは、主治医が週3回以上の点滴治療が必要と判断した際に交付される指示書です。指示期間は7日になるので、必要であれば毎週交付されます。また、指示期間は最大7日で、月に何度でも交付することが可能です。

精神科訪問看護指示書

精神科訪問看護指示書とは、精神科の主治医が精神訪問看護の必要性があると判断した際に交付される指示書のことです。精神科医のみが交付することができます。この指示書により看護師以外に精神保健福祉士、保健師の訪問も可能になります。訪問看護指示書と合わせて交付はされないことには留意が必要です。指示期間は最大14日まで設定することができます。

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 訪問看護指示書の確認すべき項目

訪問看護指示書の確認すべき項目

実際に訪問看護指示書が交付された際に確認すべき項目を、指示書の雛形を使って解説していきます。

地方厚生局HPより

訪問看護指示期間

訪問看護指示書の指示期間が記載される項目です。指示期間は1~6か月と定められており、6か月を超えた期間を記入してしまうと、無効な訪問看護指示書として扱われます。指示期間の記入がない場合は、指示期間は発行から1ヶ月です。

点滴注射指示期間

点滴注射の指示期間が記入される項目で、指示期間は最長1週間です。

主たる傷病名

患者さんの抱える主病名を記載する項目です。訪問看護の利用が医療保険なのか介護保険なのかが決まってくるので、しっかりと確認することが重要です。

現在の状況

患者さんが現在どのような状況に置かれているのかを記載する項目です。適切な訪問看護を実施するためには、とても大事な項目ですから、よく読んで理解をする必要があります。利用者の症状や服薬している薬剤および投薬量、投薬方法などを詳細に記載されています。

現在の状況の項目は以下の細目に分けられます。

・病状・治療状態:記述形式
・投与中の薬剤の容量・用法:1. ~ 6.まで番号が振られており、必要なだけ記述
・日常生活の自立度(寝たきり度、認知症の状況):該当項目を丸で囲む
・要介護認定の状況:該当項目をまるで囲む
・褥瘡の深さ:該当項目を丸で囲む
・装着・使用医療機器等:該当項目を丸で囲む(一部記入箇所あり)

留意事項及び指示事項

留意事項及び指示事項は、訪問看護を受ける際に気をつけてほしいことを記載する項目です。食事、入浴、排泄、活動の程度や安静度等、日常生活で注意すべき情報を記入します。この項目の記載内容にあわせて、訪問看護サービスが提供されますので、しっかりと必要事項を確認しましょう。

在宅患者訪問点滴注に関する指示

在宅患者訪問点滴注に関する指示は、訪問看護で患者さんに対して行う点滴についての指示を記入する項目です。点滴の種類や投与量、投与速度、投与方法、投与頻度、投与時間、輸液ルートなどを記入していきます。看護師はこの指示に従って点滴を行います。

特記すべき留意事項

特記すべき留意事項とは、薬の相互作用・副作用についての留意点や薬物アレルギーの既往など、訪問看護ステーションなどを利用するに当たって、留意しなければいけない内容を記入する項目です。「身体の筋緊張が強く拘縮等があるので、看護師1名での対応困難だと想定しています。複数名で対応してください」など、看護師の人数についての要望も書かれることがあります。

 訪問看護指示書を交付してもらえないときはどうしたらいい?

訪問看護指示書を交付してもらえないときはどうしたらいい?

時には主治医から訪問看護指示書を交付してもらえない場合があります。このような時にどうすべきがいいのか、訪問看護指示書を交付してもらうための対処法を紹介します。

発行の必要性を明確にする

訪問看護指示書は、主治医の合意を得られていない場合には訪問看護指示書は交付されません。ですから、指示書を交付してもらうためには、訪問看護の利用について、主治医の合意を得ることが不可欠です。

患者さんが自ら主治医に説明することが難しい場合には、訪問看護ステーションなどから訪問看護が必要な状況がわかる書類を作り、患者さんから医師に手渡してもらうこともできます。実際に看護を行う事業所や担当のケアマネジャーから、訪問看護の必要性を明確に説明することで主治医の同意を得られやすくなることもあるので、患者さんの同意を得て、FAXなどで在宅での状況を主治医に共有することも1つの手段です。

指示してもらいたい内容を明確にする

主治医は患者さんがクリニックなどに診療にきたときの状態しか把握していないこともあります。患者さんが日常生活でどのような状況にあるのか、訪問看護を受けることで、患者にとってどのようなメリットがあるのかを伝えるだけではなく、具体的に出してほしい指示について伝えることも、必要性を理解してもらうことに役立つことがあります。

こうした対処法を講じても訪問看護指示書を出すことへの同意が得られない場合は、主治医ではない医師のセカンドオピニオンを活用することも選択肢に入れておくといいでしょう。

 まとめ

まとめ

ここまで、患者さんを訪問看護するために必要な訪問看護指示書について、4種類の指示書の特徴や、指示書に記載される項目などについて解説してきました。訪問看護が必要な患者さんがスムーズにサービスを受けることができるよう、今回解説したポイントを参考にしてみてください。

監修医師のコメント

訪問看護指示書を作成するうえで心がけていることは、現在の病状などを把握できるように記載することはもちろんですが、あまり長文にならずに簡潔にわかりやすく、そして正確な情報を提供することです。

処置や点滴、内服加療などの内容についても伝達ミスが起きないように、明確な記載を心がけています。また、留意事項の欄に今後起こりうる状況を加味した内容も書くようにしています。

指示書を受け取る訪問看護師さんに留意していただきたいことは、病状変化や生活上で変化がある場合に指示書発行医療機関への報告をしていただくことです。早急な対応が取れるような連携基盤を一緒に築いていけるようになるとよいと考えています。複数の医療機関が介入している場合は、報告先を明確にしておくことで急変時対応などが遅れずにとれるかと思います。

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監修者情報

監修:廣田 智也

医療法人修志会 ファミリークリニック荒川理事、統括院長
日本大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院の整形外科に入局。その後、複数の関連病院に勤めて研鑽を積んだのち、訪問診療を専門に行う『ファミリークリニック荒川』の院長に就任。
保有免許・資格
整形外科専門医, 認知症サポート医, 難病指定医, 身体障害者福祉法指定医

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