【令和6年度報酬改定】放課後等デイサービスの押さえるべきポイントを解説!

2024年4月に、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定が施行されました。改定では、①障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり、②社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応、③持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し、という3つの基本的な考え方をもとに取りまとめられています。

今回は、障害児支援のうち、放課後等デイサービスに関する報酬改定について、詳しく説明していきます。

 放課後等デイサービス(放デイ)とは

放課後等デイサービス(放デイ)とは

放課後等デイサービスとは、2012年4月に児童福祉法に基づき始まった福祉サービスで、6〜18歳の障害がある小学生、中学生、高校生を対象にしています。

元々は、通所支援サービスは未就学児と就学児が一緒に利用できるサービスでしたが、2012年の児童福祉法改正の際に、未就学児は児童発達支援に、就学児は放課後等デイサービスに分けられました。放課後デイサービスは放課後や休日の他、夏休みや冬休みなどの長期休暇でも利用することができます。

放課後等デイサービスでは、子どもの発達過程や特性、適応行動の状況を理解した上で放課後等デイサービス計画(個別支援計画)を作成して、以下のような発達支援を行います。

自立支援と日常生活の充実のための活動

子どもの発達に応じて、掃除や着替えなど、日常生活で必要となる動作や自立生活を支援するための活動を行います。遊びを通して、自発的に子どもが参加する仕組みを作ったり、小さな成功体験を積み重ねていくことで、子どもの自己肯定感を高めていきます。

創作活動

ダンスなどの運動や、絵や楽器を習うことを通じて、表現する喜びを体験します。自然に触れる機会を設け、季節の変化に興味を持てるようにすることで、豊かな感性を培います。 

地域交流の機会の提供

障害を理由に経験の範囲が制限されないよう、地域で行われる多彩な学習・体験・交流活動との連携、ボランティアの受け入れにより、地域との交流を図ります。土日や休日を利用した社会見学を実施する場合もあります。

余暇の提供

子どもがやりたい遊びをしたり、自分自身をリラックスさせる練習等のアクティビティを自分で選んで取り組む経験を積みます。このほか配置される職種によっては、OT・STなどのリハビリを含めたサービスを行う事業者もあります。

 主な報酬改定

主な報酬改定

それでは、いよいよ放課後等デイサービスに関する報酬改定について見ていきましょう。

基本報酬における時間区分の創設

今回の改訂で大きく注目されたのは、時間区分が新たに導入されたことです。改訂前では、授業終了後と学校休業日でそれぞれ報酬単位が設定されており、授業終了後は604単位、学校休業日は721単位となっていました。それが今回の改訂によって、授業終了後と学校休業日という区分けは廃止され、利用する時間によって3つの区分が新たに作られました。
それぞれの区分は以下のとおりです。

区分

利用時間

単位

30分以上1時間30分以下

574

1時間30分以上3時間以下

 

609

3時間超5時間以下

※学校休業日のみ

666

改定後の基本報酬の取扱いの留意点

新たに導入された時間区分については以下のようなポイントに留意が必要です。

 時間区分は個別支援計画に定めた計画時間で判定することが基本

   時間区分は個別支援計画に定めた
   計画時間で判定することが基本

放課後等デイサービスで作成される個別支援計画に、子どもごとに実施される日々の支援について、計画時間、つまり支援に必要な時間を決める必要があります。この個別支援計画の計画時間をもとに基本報酬が算定されます。

 最低利用時間を30分と設定

   最低利用時間を30分と設定

30分未満の短い時間の支援は、算定対象から原則除外されます。ただし、周囲の環境に慣れるために支援を短時間にする必要がある場合などは、市町村等が認めれば、個別支援計画に記載される計画時間で 30 分未満と設定することができます。この場合は、30分未満でも報酬の算定が可能です。

 区分3「3時間超5時間以下」は学校休業日のみ算定対象

   区分3「3時間超5時間以下」は
   学校休業日のみ算定対象

最も長い時間の区分3は基本報酬の単位も一番高く設定されていますが、学校休業日にしか算定することはできませんので、注意が必要です。

 計画時間と実際に支援した時間が異なる場合は、要因で対応が異なる

   計画時間と実際に支援した時間が
   異なる場合は、要因で対応が異なる

報酬算定の基準となる計画時間と、実際に支援した時間が異なる場合の対応は以下のように場合分けされます。

・支援時間が短くなった場合

要因

対応

利用者の都合

個別支援計画に定めた提供時間が該当する時間区分で算定する。

30分未満となった場合でも算定可能。

事業者都合

実際に支援に要した時間が該当する時間区分で算定する。

30分未満となった場合には算定不可。


・支援時間が長くなった場合

要因

対応

利用者の都合

個別支援計画に定めた提供時間が該当する時間区分で算定する。

事業者の都合

個別支援計画に定めた提供時間が該当する時間区分で算定する。

※ただし、学校の短縮授業等により支援時間が長くなることが想定される場合には、想定される具体的な内容を個別支援計画に定め、必要な体制をとっている場合には算定可能です。

 平日に3時間以上、学校休業日に5時間以上の長時間支援は、延長支援加算で評価

   平日に3時間以上、学校休業日に5時間以上の
   長時間支援は、延長支援加算で評価

時間区分を超えて放課後等デイサービスを利用する場合は、延長支援加算の仕組みで評価されることになりました。この延長支援加算についても、今回の改訂で見直されましたので、詳しくは、「延長支援加算の見直し」の項目でご説明します。

専門的支援加算と特別支援加算の統合

これまでの専門的支援加算と特別支援加算については、今回の改訂で統合されることになりました。新しい仕組みでは、専門的な支援を提供する体制に対して評価される専門的支援体制加算と、専門人材による個別・集中的支援の計画的な実施に対して評価される専門的支援実施加算の2段階で評価されます。

それぞれの評価については以下のとおりです。

加算の種類

単位

専門的支援加算

49~123/日(区分に応じて変化)

特別支援加算

150/回(月2〜6回まで)

延長支援加算の見直し

今回の改訂で注目されているポイントの1つに延長支援加算の見直しがあります。これまでは、事業所の運営規程で定められている営業時間が8時間以上で、その前後に支援を行った時に算定されるものでした。しかし、先ほどご紹介したように、今回の改訂で基本報酬における時間区分が導入されたことにより、延長支援加算も見直されることとなりました。

今回の改訂で、延長支援加算が入るのは、以下の要件を満たすことが必要です。

・平日は3時間、学校休業日は5時間の発達支援を行うことに加えて、その前後に預かりニーズに対応した支援を計画的に行った場合

・職員を2名以上(うち1名は人員基準により置くべき職員(児童発達支援管理責任者を含む)を配置

・延長時間30分以上1時間未満の区分は、利用者の都合等で延長時間が計画よりも短くなった場合に限り算定可能 

放課後等デイサービスを障害児が利用した場合の新たな加算については以下のとおりです。

延長時間

単位

30分以上1時間未満

61/日

1時間以上2時間未満

92/日

2時間以上

123/日

関係機関連携加算の見直し

関係機関連携加算とは、放課後等デイサービスを利用している子どもの関係者と連携して、サービスの質を高めていることに対する加算です。具体的には、放課後等デイサービス計画に関する会議を通じて、関係者同士で情報共有を行い、子どもに対する理解を深めていきます。今回行われた報酬改定では、新たに関係機関連携加算(Ⅲ)、関係機関連携加算(Ⅳ)が追加されることになりました。

区分ごとの関係機関連携加算は以下のとおりです。

加算の種類

単位

概要

関係機関連携加算(Ⅰ)

(月1回を限度)

250/回

保育所や学校等との個別支援計画に関する会議を開催し、連携して個別支援計画を作成等した場合

関係機関連携加算(Ⅱ)

(月1回を限度)

200/回

保育所や学校等との会議等により情報連携を行った場合

関係機関連携加算(Ⅲ)

(月1回を限度)

150/回

児童相談所、医療機関等との会議等により情報連携を行った場合

関係機関連携加算(Ⅳ)

(1回を限度)

200/回

就学先の小学校や就職先の企業等との連絡調整を行った場合

強度行動障害児支援加算の見直し

食べられないものを口に入れる、道路への飛び出しなど危ない行動をとる、暴力や物を壊すなど、周りの人の生活に影響を及ぼす行動が著しく高い頻度で起こる状態を強度行動障害と言います。この強度行動障害を持つ子どもに対して、強度行動障害支援者養成研修や中核的人材養成研修の修了者がサービスを提供した時に算定することができる加算が、強度行動障害児支援加算です。

今回の報酬改定では、強度行動障害を持つ子どもへの支援を充実させるために、支援スキルのある職員の配置や支援計画の策定等を求めるなど、強度行動障害児支援加算の単位数と算定要件の見直しが行われました。

強度行動障害児支援加算の単位は以下のとおりです。

加算の種類

単位

強度行動障害児支援加算(Ⅰ)

通常

200/日

加算開始から90日以内

700/日

強度行動障害児支援加算(Ⅱ)

通常

250/日

加算開始から90日以内

750/日

 運営基準の改定

運営基準の改定

これまでは報酬改定の項目について紹介しましたが、放課後等デイサービスの運営基準についても改訂されました。ここからは、運営基準の改訂のポイントを説明していきます。

5領域を含めた総合的な支援の義務化

今回の改訂で、放課後等デイサービスの支援では「5領域」全てを含めた総合的な支援を提供することが運営基準に明記されました。この「5領域」は以下にとおりです。

・健康・生活
・運動・感覚
・認知・行動
・言語・コミュニケーション
・人間関係・社会性

支援内容について、事業所の個別支援計画等において5領域とのつながりを明確化した上で提供することを求める内容となっています。この5領域全てに対応することが求められることになったため、特定の療育内容に特化したタイプの放課後等デイサービスの場合は、内容や運営方針の見直しが必要になる場合も想定されますので、特に注意が必要です。

地域社会への参加・包摂(インクルージョン)の推進

インクルージョンとは、障害のある子どもが地域社会に参加すること、そして子どもを地域社会が受け入れることです。厚生労働省ではインクルージョンの推進について、放課後等デイサービスが果たすべき役割や支援範囲について検討が行われてきました。

今回の改訂では、以下の2つが大きなポイントとなっています。

 インクルージョンに向けた取組の推進(運営支援の新設・一部改正)

   インクルージョンに向けた取組の推進
  (運営支援の新設・一部改正)

併行通園や保育所等への移行など、インクルージョン推進の取組が求められるようになりました。さらに事業所で作られる個別支援計画でも、具体的な取組について記載することになる他、計画に盛り込んだ取り組みを実施することが求められるようになりました。

 保育・教育等移行支援加算の見直し

   保育・教育等移行支援加算の見直し

インクルージョン推進のために、保育・教育等移行支援加算も見直されました。
取り組みの内容に応じて以下のような単位が算定されます。

取り組み内容

単位

退所前に移行に向けた取組を行った場合

(2回を限度)

500/回

退所後に居宅等を訪問して相談援助を行った場合

(1回を限度)

500/回

退所後に保育所等を訪問して助言・援助を行った場合

(1回を限度)

500/回

業務継続計画(BCP)策定義務化

BCP = 業務継続計画の策定が義務化されたことも運営基準の改訂で大事なポイントです。利用する子どもや家族の生活には欠かせない存在の放課後等デイサービスは、新型コロナや地震などの災害など、不測の事態が起きた時でも、対策等を実施しながら、必要なサービスを継続することが求められています。業務継続計画の策定が義務付けられたことで、財政基盤を含めたしっかりと必要なサービスを継続する準備が全ての事業所で行われるようになりました。

もしも業務継続計画が策定されないと業務継続計画未策定減算の対象になってしまい、所定単位数の1%を減算されます。

虐待・身体拘束の減算の新設・見直し

2022年度から義務化された障害者虐待防止措置について、実施できていない事業所等に対する基本報酬を1%減算することが新たに設定されました。減算の対象になるのは以下の基準を満たしていない事業所です。

・虐待防止委員会を定期的に開催するとともに、その結果について従業者に周知徹底を図る
・従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施する
・上記措置を適切に実施するための担当者を置く

また、身体拘束廃止の取り組みについては、基準を満たしていない場合に5単位/日を所定単位数から減算することがすでに行われています。この減算について見直しが行われ、基準を満たしていない場合に、所定単位数の1%を減算することになりました。

自己評価・保護者評価の充実

放課後等デイサービスでは、ガイドラインの内容に沿った運営を行うように自己評価の公表がすでに義務付けられていますが、今回運営基準が見直されることで、さらに充実することになりました。

見直しされた後の自己評価・保護者評価については以下のようなポイントになっています。

・指定児童発達支援事業所の従業者による評価を受けた上で自己評価を実施するとともに、保護者評価を受けて改善を図る。

・おおむね1年に1回以上、自己評価と保護者評価の内容、さらに評価を受けて実施する改善内容について、保護者に示すとともに、インターネット等により公表しなければならない。

 個別支援計画

個別支援計画

放課後等デイサービスの事業所で作成されている個別支援計画について、定型のフォーマットが公開されました。「個別支援計画参考様式」と「個別支援計画参考様式別表」です。2024年5月以降の個別支援計画書は、これらのひな形を使用する必要があります。

※個別支援計画参考様式


※個別支援計画参考様式別表

個別支援計画様式についてはこども家庭庁のHPからダウンロードすることができます。

新たに記載が必要となった事項

公開された個別支援計画様式には、今回から新たに記載することが必要になった項目があります。それぞれ説明していきます。

 時間区分の導入に伴う、個々の障害児の日々の支援に係る計画時間等

   時間区分の導入に伴う、
   個々の障害児の日々の支援に係る計画時間等

記載する計画時間について、予定時間よりも上回る計画を記載する必要があります。時間区分によって基本報酬が変わりますので、すでにご説明した「基本報酬における時間区分の創設」を参考にしてください。

 延長支援加算の見直しに伴う、個々の障害児の日々の延長支援時間等

   延長支援加算の見直しに伴う、
   個々の障害児の日々の延長支援時間等

支援時間の前後いずれかの時間を延長として記載する必要があります。特記事項に延長の理由を必ず記載しなければなりません。

 個々の障害児の5領域との関連性を明確にした支援内容及びインクルージョンの観点を踏まえた取組等

   個々の障害児の5領域との関連性を明確にした
   支援内容及びインクルージョンの観点を
   踏まえた取組等

運営基準の改訂について、「5領域を含めた総合的な支援の義務化」と「インクルージョンに向けた取組の推進(運営支援の新設・一部改正)」を大事なポイントとしてすでにご説明しましたが、個別支援計画にも記載が必要になってきます。

経過措置(令和6年4月から10月までの取扱い)

個別支援計画の見直しは、6ヶ月に一回以上というサイクルで行われるため、新たな仕組みに移行するための経過措置が設けられています。

具体的には2024年4月1日〜 10 月 31 日が経過措置の期間に該当します。この期間は、別紙「個別支援計画参考様式」の2枚目の「個別支援計画別表」を活用して、計画時間や延長支援に必要な時間を設定し、現行の個別支援計画とあわせて対応することが求められます。
2024年4月中に個別支援計画別表に保護者の同意を得る必要があります。

 まとめ

まとめ

今回の記事では、2024年の放課後等デイサービスの報酬改定について、主な報酬内容や、運営基準を中心に紹介しました。取り上げた全ての項目が重要ですが、特に大事な項目を1つずつピックアップします。

・運営基準の改訂で特に重要なポイント:「5領域を含めた総合的な支援の義務化」
5領域全てに対応することが求められることになったため、特定の療育内容に特化したタイプの放課後等デイサービスの場合は、内容や運営方針の見直しが必要になる場合も想定されます。さらに、オペレーションへの負担が増えることも想定されます。

・報酬改訂で特に重要なポイント:「基本報酬における時間区分の創設」
改訂前では、授業終了後と学校休業日で分けられていましたが、3つの時間区分が新たに設けられました。個別支援計画でもしっかりと明記する必要があります。

改定の内容は、しっかりと理解して対応することが必要です。ぜひこの記事を参考にしてみてください。

監修医師のコメント

放課後等デイサービスは、発達障害のお子さんの地域での居場所として、近年増加傾向にあります。今回の改定は、時間数に応じたサービス単価支給が設定されるなど、実態に即した内容と言えるでしょう。質の高い放課後等デイサービスを提供する、社会的な意義のメッセージ性がうかがえます。

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また【児童発達支援・放課後等デイサービスフェア】も特設!発達支援事業者の経営者・理事長・責任者などが来場する展示会です。
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監修者情報

監修:武井 智昭

医療法人社団 柴健会 小谷クリニック
高座渋谷つばさクリニック

【経歴】
2002年 慶應義塾大学医学部卒業
2004年 立川共済病院勤務
2005年 平塚共済病院小児科医長として勤務(内科)
2010年 北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室兼任
2012年 横浜市内のクリニックの副院長として勤務 (スマイルこどもクリニック)
2015年 小谷クリニック 内科・小児科(訪問診療部)部長
2017年 「なごみクリニック」内科・小児科・アレルギー科 院長
2020年4月~ 「高座渋谷つばさクリニック」院長就任

【専門医・認定医】
・小児科専門医・指導医
・日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)
・臨床研修指導医(日本小児科学会)
・小児感染症学会認定医
・抗菌化学療法認定医
・プライマリケア学会認定医
・認知症サポート医
・日本臨床内科学会認定医
・日本糖尿病学会認定医