オンライン薬局とは?オンライン服薬指導や店舗型との違い・開業準備を解説
近年、オンラインによる診療や服薬指導に対する規制が緩和されました。薬剤師によるオンラインの服薬指導が可能となり、患者にとっての利便性向上が期待されます。
また、オンライン服薬指導の解禁に伴い、オンライン薬局も増えてきました。今回は、オンライン薬局について店舗型薬局と比較しながら詳しくご紹介するとともに、開業のために必要な準備についても解説します。
オンライン薬局とは?
オンライン薬局とは?
オンライン薬局という言葉は、あまり聞き馴染みがない方もいるでしょう。まずはオンライン薬局について、それに類似した言葉である「オンライン服薬指導」と比較しながら解説します。
オンライン薬局とオンライン服薬指導のサービスの違い
オンライン薬局とは、実際に調剤薬局などの店舗へ出向くことなく、オンライン上の手続きのみで医療用医薬品や一般用医薬品を患者へ提供するサービスです。店舗型の調剤薬局と同等と考えてください。オンライン薬局で提供する業務の1つとして、オンライン服薬指導があります。
オンライン服薬指導は、コロナ禍の2020年4月に厚生労働省から発出された「0410通知」を元に解禁され、当初は電話(音声のみ)での実施も可能でした。その後、令和4年度の診療報酬改定により、リアルタイムの映像および音声による対応が必須と変更になり、現在に至ります。
オンライン服薬指導自体は、オンライン専門薬局だけでなく、店舗型薬局でも実施しているところが増えています。必ずしも、オンライン薬局でのみおこなわれるものではありません。
オンライン服薬指導に対応する店舗型薬局は増えています。後ほどご説明しますが、オンライン薬局の開設にも実店舗が必要であるため、現在のところ「オンライン専門」の薬局はほとんどないようです。
オンラインで交付・販売できる薬の種類
オンラインでも、医療用医薬品・一般用医薬品のいずれも交付・販売が可能であり、原則的には店舗型薬局と同じです。ただし、オンラインでは部分的に制限されるものもあります。
まず、医療用医薬品の交付は、対面診療の場合と同様に、医師の診療と処方箋発行、薬剤師の服薬指導を経てのみ可能です。服薬指導を省略することはできません。手技が必要な薬剤(吸入薬、インスリン製剤など)は、薬剤師がオンライン服薬指導で問題ないと判断した場合に限り、オンラインでの対応ができます。
一部、処方自体に制限のある医薬品もあります。初診での麻薬や向精神薬の処方、体重減少目的の利尿剤、一部の糖尿病治療薬など不適正使用が疑われる場合は、処方が制限されるため、調剤・交付もできません。
さらに、一般用医薬品のうち「要指導医薬品」に該当するものは、薬剤師による対面の説明を伴う販売が原則とされており、オンライン販売は現在のところ原則不可とされています。要指導医薬品は、薬剤師による対面販売しかできません。現在のところ、第一類医薬品のオンライン販売は、購入者とのやり取りを最低一往復半することを条件として可能です。
オンライン薬局の仕組みと流れ
オンライン薬局を利用して、医療用医薬品の交付を受ける際は、次のような流れになります。
① オンラインまたは対面で医療機関を受診
まずは医療機関を受診し、処方箋の交付を受けます。医療機関は対面受診でも、オンライン服薬指導を受けることは可能です。
② 処方箋を医療機関から薬局へ送付
処方箋を、医療機関から患者が希望する薬局へ送付します。
③ オンライン服薬指導の予約
患者が、オンライン服薬指導を受けたい日時を予約します。予約方法は、薬局ごとに異なりますが、アプリなどで予約できるケースが多いです。
④ オンライン服薬指導を実施
リアルタイムの映像および音声を介して服薬指導をおこないます。
⑤ 薬剤の交付
調剤した薬剤を患者へ届けます。医薬品の品質保持、患者本人への確実な授与のため、適切な配送方法を取らなければなりません。薬剤師が直接ご自宅へ届けに行く場合もあります。
オンラインと店舗型の薬局の違い
オンラインと店舗型の薬局の違い
オンライン薬局と店舗型薬局は、双方にメリット・デメリットがあります。開業の際は、ターゲット層やニーズをよく検討する必要があるでしょう。
オンライン薬局の特徴
オンライン薬局は次のようなさまざまなメリットがあり、今後さらなる利用拡大が見込まれます。
・患者のタイミングで服薬指導を受けられる(待ち時間という概念がない)
・他の患者に話を聞かれる心配がなくプライバシーが守られる
・感染症の懸念がない
・オンライン診療との組み合わせにより自宅にいながら全て完結できる
・患者家族も一緒に服薬指導を受けやすい
・日常生活の状況を把握しやすい
一方で、対面での服薬指導と比較した場合に、デメリットもあります。
・受け取りを希望する薬局によっては薬の取扱いがないケースもある
・薬を受け取るまでに時間がかかる
・お薬手帳の情報を確認しにくい
・残薬の確認がしにくい
・コミュニケーションが難しい場合がある
店舗型薬局の特徴
従来の店舗型薬局は、なんといってもその場ですぐに薬を受け取れるのがメリットです。感染症や急な体調不良で受診した場合、薬を受け取るまでにタイムラグがあると、症状が悪化してしまう懸念もあります。店舗型薬局は、急性疾患と相性がよいと言えるでしょう。また、血圧・握力・血糖値などを実際に測定して指導や情報提供に活かすこともできます。
一方、移動や待ち時間が発生してしまうこと、営業時間の制約があること、取り扱っている医薬品がオンライン薬局よりは少ない傾向にあること等はデメリットです。
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オンライン薬局及びオンライン服薬指導のサービスの開業準備
オンライン薬局及びオンライン服薬指導のサービスの開業準備
オンライン薬局を開業したい場合、オンライン服薬指導サービスを導入したい場合に、どのような準備が必要になるでしょうか。
オンライン薬局の開業に必要な準備
オンライン専門薬局の開業であっても、必要な準備は店舗型薬局と同様です。医療用医薬品を扱う場合、一般用医薬品を扱う場合のいずれも、「実店舗」を準備する必要があります。その上で、「薬局の開設許可申請」を管轄の保健所に提出し、審査や立ち入り調査を経て許可を得られたら、開設可能です。
オンライン服薬指導のサービスを提供するのに必要な準備
オンライン服薬指導をおこなうためには、いくつかの準備が必要です。
・通信環境の整備
情報セキュリティおよびプライバシー保護などの観点から、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に沿った対策の取れた通信環境を確保しなければなりません。また、業務に個人所有の端末を使用するには、一定の要件を満たす必要があります。
オンライン服薬指導専用のシステムの導入は必須ではありませんが、汎用サービスを用いる場合、情報漏洩等が起こらないよう、薬局側でセキュリティの確保をする必要があります。
・服薬指導をおこなう場所の確保
患者の異議がない場合は薬局以外の場所でも可能です。ただし、調剤をおこなう薬剤師に連絡ができること、プライバシーに配慮がされた環境であること、第三者が容易に立ち入ることができない空間であること、などの条件を満たす必要があります。
・情報通信機器やセキュリティに関する研修
薬剤師は、オンライン服薬指導を実施するにあたり、医薬品医療機器等法に基づく規制やセキュリティ対策など、必要な知識を習得しておく必要があります。
オンライン薬局の事例
オンライン薬局の事例
実際のオンライン薬局、オンライン服薬指導の事例をご紹介します。
汎用サービスを用いたオンライン薬局の事例
北海道札幌市で4店舗のオンライン薬局を展開する「株式会社オンライン薬局」は、LINEやFace timeを用いたオンライン服薬指導を実施しています。処方箋は、FAXまたはWEBサイトから患者自身が送信する仕組みです。薬は、ご自宅への直接配達もしくはゆうパックでの配送となっています。
実店舗があるため、急ぎで受け取りたい医薬品の場合は、患者が実店舗へ来局してお薬の受け渡しをすることも可能です。
コンビニと連携したオンライン薬局の事例
大手コンビニのファミリーマートは、お薬のコンビニ受け渡しサービス「ファミマシー」を提供しています。オンライン薬局「とどくすり」を通じて購入したお薬をファミリーマートの店舗(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の約4,500店舗)で受け取ることができます。
調剤薬局のように待ち時間が発生せず、利用者の都合の良いタイミングで24時間いつでも受け取りが可能です。
大規模なオンライン服薬指導のプラットフォーム:amazonファーマシー
amazonファーマシーは、アインホールディングス、ウエルシアホールディングス、クオールホールディングスなどの既存の店舗型薬局が導入しているオンライン服薬指導のプラットフォームです。
amazonの構築したプラットフォームを利用できるため、独自のシステム開発やセキュリティ対策などのコストは抑えることができます。広く普及しているオンライン診療アプリ「CLINICS」とも連携しており、オンライン服薬指導に対応したい店舗型薬局にとってはよい選択肢となりそうです。
まとめ・展示会のご紹介
まとめ・展示会のご紹介
今回は、今後普及が期待されるオンライン薬局について、幅広く解説しました。オンライン薬局は、多忙な方・長時間待つのが難しい方などにとって、医療アクセスを広げる有効な手段です。ただし、医薬品や個人情報の取り扱いには一定の制限やルールがあるため、制度を正しく理解したうえで導入・利用する必要があります。
メディカルジャパンは、医療や介護に関するさまざまな製品・サービスが出展する展示会です。オンライン薬局を運営するにあたって必要なシステムや電子お薬手帳、開業支援などの出展もありますので、興味のある方はぜひご来場ください。
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監修者情報
監修:吉田 大貴(よしだ だいき)
経歴:
城西大学薬学部卒
株式会社pharb所属
免許・資格:
薬剤師免許、認知症研修認定薬剤師
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