2026年診療報酬改定のポイントをわかりやすく解説

2026年度の診療報酬改定では、物価高騰・賃金上昇への対応を重点課題に、医療従事者の処遇改善や医療DXの推進、2040年を見据えた医療提供体制の再編など、幅広い見直しが行われます。

「今回の改定、自院にとって何が変わるのか」「どんな準備が必要なのか」と気になっている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、改定の背景から注目ポイント、現場への影響と対応策までをわかりやすく解説します。

 2026年度診療報酬改定の背景と目的

2026年度診療報酬改定の背景と目的

2026年度は、医療を取り巻く環境の大きな変化に対応するための重要な改定となっています。まずはその背景と目的を整理しておきましょう。

物価高騰・賃金上昇・人手不足への対応が急務

日本経済は現在、30年以上続いたデフレ・低成長の時代から脱却し、物価と賃金が持続的に上昇する新たな局面を迎えています。しかし、医療分野は国が定めた公定価格でサービスを提供する仕組みであるため、こうした経済環境の変化に柔軟に対応しにくいのが現状です。そのため、人材確保や経営の安定に深刻な影響が及んでいる医療機関も少なくありません。

2026年度改定では、「経済財政運営と改革の基本方針2025」を踏まえ、医療機関の経営基盤を下支えしながら、幅広い職種での賃上げを実現しつつ、現役世代の保険料負担を抑えるという、バランスのとれた対応が目指されています。

2040年頃を見据えた医療提供体制の構築

2040年頃には、働き手となる生産年齢人口が全国的に大きく減少する一方、医療と介護の両方が必要な85歳以上の人口が急増すると予測されています。また、地域によって高齢者人口の増減に大きな差が生じるなど、地域格差もさらに広がる見通しです。

こうした変化に備えて、限られた医療資源を最大限に活かしながら、急性期医療と生活を支える医療それぞれの役割を明確にした「地域完結型の医療提供体制」の構築が急務となっています。

あわせて、医療従事者が長く働き続けられる環境の整備や、職種間での業務分担(タスク・シェアリング/タスク・シフティング)の推進も重要な課題に位置づけられています。

医療DX・イノベーションによる質の高い医療推進

AI(人工知能)やICT(情報通信技術)を活用した医療DXの推進は、業務の効率化にとどまらず、一人ひとりの健康増進や医療の質向上にも直結します。デジタル化された医療情報を積極的に活用するとともに、新薬・医療機器の開発力を強化し、革新的な治療を国民に届けることも今改定の重要な柱のひとつです。医薬品の安定供給の確保等の解消に向けた取り組みも盛り込まれています。

医療保険制度の安定・持続に向けた効率化と適正な運用

国民皆保険制度を次世代に引き継ぐためには、制度の持続可能性を確保しながら、医療資源の効率的・重点的な活用を進めることが欠かせません。現役世代の負担増を抑えつつ、医療の適正化とイノベーション評価を両立させるバランスのとれた政策運営が、今改定の根幹にある考え方です。

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 2026年度診療報酬改定のスケジュール|6月1日施行に決定

2026年度診療報酬改定のスケジュール|6月1日施行に決定

2026年度の診療報酬改定は、2025年4月のキックオフを皮切りに検討が進められました。その後、7月から9月にかけて「その1」シリーズ、10月から12月にかけて「その2」シリーズの議論が行われ、12月24日の予算大臣折衝を踏まえ改定率が決定しています。諮問・答申を経て、6月1日に改定が施行される予定です。

診療報酬改定までのスケジュールは以下のとおりです。

 2026年度診療報酬改定の4つの注目ポイント

2026年度診療報酬改定の4つの注目ポイント

今改定では、医療DXの推進や在宅医療の充実、働き方改革への対応など、多岐にわたる見直しが行われます。特に注目すべき4つのポイントを解説します。

①医療DXのさらなる推進

電子カルテや電子処方箋の普及、AI・ICT・IoT(モノのインターネット)の医療現場への導入が、今改定の重要テーマのひとつです。医療DXに積極的に取り組む医療機関・薬局を診療報酬上で評価する仕組みが強化され、デジタル技術を活用した業務効率化と医療の質向上を同時に実現する体制づくりが後押しされます。

また、医師・病院薬剤師と薬局薬剤師が連携して医薬品の適正使用を推進する取り組みも、DX活用の重点施策として位置づけられています。

②在宅医療の充実・推進に向けた評価の見直し

2040年を見据えた医療提供体制の再編において、在宅医療の役割はますます大きくなります。今改定では、在宅療養患者や介護保険施設入所者を緊急時に受け入れる「後方支援機能」を持つ医療機関への評価が見直されます。

また、円滑な入退院の実現や、リハビリテーション・栄養管理・口腔ケアなど高齢者の生活を支える包括的なケアの充実も、重要な柱のひとつです。あわせて、かかりつけ医・かかりつけ薬剤師の機能に対する評価強化も注目されています。

③働き方改革・処遇改善に対応した報酬体系へ

医療従事者の確保が年々難しくなる中、処遇改善と働き方改革への対応が今改定の課題です。医療従事者の給与水準向上につながる報酬体系の整備に加え、チーム医療の推進による業務負担の分散化が進められます。

また、施設基準の柔軟化により、人員確保が難しい医療機関でも必要な医療機能を維持しやすくなる配慮がなされています。

④人員配置から成果・アウトカム評価重視へ転換

従来の「人員配置基準を満たしているか」という評価から、「実際に患者にとって良い結果が出ているか」というアウトカム重視の評価へのシフトが進みます。患者の安全確保や治療成果に着目した体制への評価が強化されるとともに、後発医薬品(ジェネリック)・バイオ後続品の使用促進や費用対効果評価制度の活用など、医療の質を維持しながらコストの適正化を図る取り組みも柱となっています。

 診療報酬改定が医療現場に与える影響

診療報酬改定が医療現場に与える影響

今改定は、医療現場にとって追い風となる部分がある一方、対応コストや業務負担の増加といった課題も伴います。プラス面・マイナス面を整理しておきましょう。

プラス面

今改定では、医療従事者の処遇改善と経営安定化に向けた措置が講じられており、現場にとって歓迎すべき点が多くあります。物価高騰や光熱費・材料費の上昇を反映した報酬の見直しにより、医療機関の経営基盤が下支えされることが期待されます。

また、タスク・シェアリングの推進や施設基準の柔軟化により、人手不足に悩む医療機関でも必要な体制を維持しやすくなるでしょう。

在宅医療や訪問看護への評価強化は、地域で患者を支える現場のモチベーション向上にもつながるものと考えられます。医療DXの推進による業務効率化は、スタッフの負担軽減と医療の質向上を同時にもたらすことが期待されるでしょう。

マイナス面

一方で、改定への対応には少なくない負担も伴います。新たな算定要件や施設基準への対応のため、書類作成・院内体制の整備・スタッフ教育といった業務が増加することは、これまでの改定でも共通して見られる課題です。

後発医薬品の使用促進やOTC類似薬(市販薬に類似した処方薬)の自己負担見直しなど、患者への説明が必要な場面も増えることが予想され、窓口対応の負荷が高まる可能性があります。医療DXへの対応についても、システム導入コストや運用負担が中小規模の医療機関には重くのしかかるケースも想定されます。

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 2026年度診療報酬改定に向けた準備・対応策

2026年度診療報酬改定に向けた準備・対応策

改定内容を収益につなげるためには、早期からの準備と院内体制の整備が欠かせません。取り組むべき対応策を6つのポイントでご紹介します。

①最新情報の収集とスケジュール管理

告示・通知の内容は膨大であるため、厚生労働省や各都道府県の情報を定期的にチェックし、自院に関係する項目を早期に洗い出すことが重要です。改定内容の把握から届出準備・算定開始までの院内スケジュールを逆算して組み立て、担当者を明確にした上で、計画的に対応を進めることが求められます。

なお、6月1日からの算定を行うためには、期限内に管轄の地方厚生(支)局への届出が必要です。期日を逃さないよう、院内での管理体制を整えておきましょう。

②現行施設基準の確認と新基準への適合準備

改定のたびに施設基準の要件が見直されるため、現在算定している加算・管理料について、新基準を満たしているかを早急に確認することが必要です。今改定では基準の柔軟化も盛り込まれており、これまで算定できなかった施設が新たに要件を満たせるケースも出てきます。

一方で、要件が厳格化される項目については、人員配置や設備の見直しが必要になる場合もあります。現行の体制を棚卸しし、新基準との差異を把握した上で、優先順位をつけて対応を進めましょう。

③スタッフへの院内共有と役割分担・研修実施

診療報酬改定の内容は、医師・看護師・薬剤師・医事スタッフなど多職種にまたがります。算定要件を正しく理解しないまま運用すると、算定ミスや要件違反につながるリスクがあります。改定内容が告示された後は、職種ごとに関連する変更点を整理し、院内勉強会や研修を通じて周知を徹底しましょう。

また、タスク・シェアリングの推進に対応するため、これまで特定の職種が担っていた業務を見直し、チーム医療の観点から役割分担を再整理する機会としても活用できます。

④ICT・システムの見直し/医療DX導入検討

今改定では、医療DXに関連する新たな加算が多数新設されます。例えば、電子的診療情報連携体制整備加算や救急時医療情報取得加算など、電子処方箋・電子カルテ共有サービス・マイナ保険証の活用状況に応じた評価体系が整備されます。一方で、従来の医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算は廃止され、新たな評価体系に再編されますので、注意が必要です。

オンライン診療についても、施設基準の見直しや評価の拡大が行われます。そのため、自院のシステム環境を確認し、導入・更新の要否を早めに検討しておくことが求められます。医療DXへの対応はコストを伴いますが、業務効率化や加算取得による収益改善につながる投資として、計画的に判断を進めることが重要です。

⑤算定ミス・算定漏れの防止

今改定における診療報酬本体の改定率は、2年度平均でプラス3.09%となっています。(出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」

改定率がプラスであっても、算定漏れがあれば本来得られるべき収益を逃すことになりますので、注意が必要です。

新設・見直しされた加算・管理料を確実に把握し、算定要件を満たしているにもかかわらず請求できていない項目がないか、定期的に点検する体制を整えることが求められます。電子カルテや医事システムのマスタ更新は施行日までに完了させ、請求漏れが発生しない運用フローを事前に構築しておくことが重要です。

⑥経営状況・現場実態の可視化と戦略的見直し

診療報酬改定は、単なる点数の変更にとどまらず、自院の経営戦略を見直す大切な機会です。今改定では施設類型ごとにメリハリのある配分がなされており、例えば物価対応分は病院に手厚く配分される一方、医科診療所・歯科・薬局への配分は限定的です。

自院の収益構造を改めて分析し、強化すべき診療領域や取得可能な加算を洗い出すことが経営改善につながります。また、後発医薬品への置き換え促進や長期処方・リフィル処方(一定期間、同じ処方箋を繰り返し使える仕組み)の強化など、効率化による適正化も求められています。

改定内容を踏まえた収支シミュレーションを早期に実施し、現場スタッフと経営層が共通認識を持ちながら対応を進める体制づくりが、今後の安定経営の鍵となるでしょう。

 患者側への影響

患者側への影響

今改定では、医療機関の物価高騰や賃上げへの対応を反映する形で、患者の窓口負担にも一定の変化が生じます。主な変更点を確認しておきましょう。

基本診療料では、再診料が75点から76点へ引き上げられます。一方で、初診料は291点のまま据え置きです。また、入院基本料も引き上げられています。
 

基本診療料の見直し

項目

改定前

改定後

初診料

291点

291点(据え置き)

再診料

75点

76点

急性期一般入院料1

1,688点

1,874点

療養病棟入院料1

1,964点

2,035点

入院時の生活関連費用についても、患者負担の増加が見込まれます。特に、入院中の食費や療養病床での光熱水費は、患者にとってわかりやすい変化であるため、説明が必要になる場面もあるでしょう。
 

食費・光熱水費の見直し

項目

改定前

改定後

変化

入院時食費(一般所得者・1食)自己負担

510円

550円

+40円

療養病床の光熱水費(65歳以上・1日)自己負担

370円

430円

+60円

CT・MRI撮影の点数引き上げや、病理診断管理加算も見直されています。
 

CT撮影の見直し

区分

現行

改定後

変更点

128列以上のマルチスライス型機器・共同利用施設

1,120点

新設

128列以上のマルチスライス型機器・その他

1,100点

新設


MRI撮影の見直し

区分

現行

改定後

変更点

3テスラ以上の機器・共同利用施設

1,620点

1,720点

100点引き上げ

3テスラ以上の機器・その他

1,600点

1,700点

100点引き上げ

今改定では、医療機関の物価高騰や賃上げへの対応を反映する形で、患者の窓口負担にも一定の変化が生じます。主な変更点を確認しておきましょう。

基本診療料では、再診料が75点から76点へ引き上げられます。一方で、初診料は291点のまま据え置きです。また、入院基本料も引き上げられています。

基本診療料の見直し

項目

改定前

改定後

初診料

291点

291点(据え置き)

再診料

75点

76点

急性期一般入院料1

1,688点

1,874点

療養病棟入院料1

1,964点

2,035点

入院時の生活関連費用についても、患者負担の増加が見込まれます。特に、入院中の食費や療養病床での光熱水費は、患者にとってわかりやすい変化であるため、説明が必要になる場面もあるでしょう。
 

食費・光熱水費の見直し

項目

改定前

改定後

変化

入院時食費(一般所得者・1食)自己負担

510円

550円

+40円

療養病床の光熱水費(65歳以上・1日)自己負担

370円

430円

+60円

CT・MRI撮影の点数引き上げや、病理診断管理加算も見直されています。
 

CT撮影の見直し

区分

現行

改定後

変更点

128列以上のマルチスライス型機器・共同利用施設

1,120点

新設

128列以上のマルチスライス型機器・その他

1,100点

新設


MRI撮影の見直し

区分

現行

改定後

変更点

3テスラ以上の機器・共同利用施設

1,620点

1,720点

100点引き上げ

3テスラ以上の機器・その他

1,600点

1,700点

100点引き上げ

 まとめ:展示会で最新情報を体験!

まとめ:展示会で最新情報を体験!

2026年度診療報酬改定は、物価高騰への対応や医療従事者の処遇改善、医療DXの推進など、医療現場の課題に正面から向き合った改定となっています。改定の恩恵を最大限に活かすためには、早期からの情報収集と院内体制の整備が何より重要です。自院にとって何が変わり、何を準備すべきかをいち早く把握し、現場スタッフと経営層が一体となって対応を進めていきましょう。

メディカルジャパン展示会では、医療DX推進に役立つシステムや設備・サービスをはじめ、診療報酬改定への対応を支援するソリューションを幅広くご紹介しています。改定対応に向けた情報収集の場としても、ぜひご活用ください。

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監修者情報

監修:五藤 良将(ごとう よしまさ)

性別:男性

経歴:千葉県立東葛飾高校卒、防衛医科大学校医学部卒。その後に自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどの勤務を経て2019年9月に継承開業に至る。

研究分野:糖尿病、AGEs、動脈硬化、

所属学会・資格:

  • 日本医師会 産業医
  • 日本内科学会 認定医
  • 日本抗加齢医学会 抗加齢医学専門医
  • 日本美容内科学会 評議員
  • 日本旅行医学会 認定医
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法医
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医
  • 難病指定医
  • 日本医師会認定健康スポーツ医
  • 日本糖尿病協会登録医

著書、論文:内臓脂肪 中性脂肪 コレステロールがみるみる落ちる 血液と体の「あぶら」を落とすスープ

所属:

  • 医療法人社団五良会 竹内内科小児科医院 院長
  • 医療法人社団五良会 理事長

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