【徹底比較】バルーンカテーテルと導尿|特徴や選び方を解説
排尿トラブルは、年齢や性別にかかわらず多くの方が直面しやすい問題です。「トイレが近い」「漏れてしまう」「うまく出しきれない」などの症状は、生活の質(QOL)に大きく影響し、日常生活の不安につながることもあります。排尿機能の仕組みや、蓄尿障害・排尿障害といったトラブルのタイプを理解することは、適切な治療やケアにつながるための第一歩です。
この記事では、バルーンカテーテルや自己導尿などの排尿管理方法の違い、それぞれのメリット・注意点、日常生活での工夫や最新技術までをわかりやすく解説しました。あなたやご家族・介助者に合った排尿ケアの選択肢を考えるため、参考にしてください。
排尿トラブルの基礎知識:「ためられない」「出せない」2つのタイプとその原因
排尿トラブルの基礎知識:「ためられない」「出せない」2つのタイプとその原因
排尿トラブルは、大きく「尿をためられない(蓄尿障害)」タイプと、「尿を出しきれない(排尿障害)」タイプの2つに分けられ、それぞれ原因や対処法が異なります。どちらのタイプかを正しく理解することで、適切なケアや治療につながり、カテーテルの使用が必要かどうかの判断にも役立ちます。
ここではまず、排尿機能の基本メカニズムと、トラブルが起こる代表的な原因について解説します。
蓄尿障害(尿をためられないタイプ)の症状と原因
通常、体内で作られた尿は膀胱に溜められ、ある程度たまると尿意を感じてトイレへ行き、排尿します。しかし蓄尿障害では、膀胱に尿を十分にためておくことができず、トイレが近くなったり、急に強い尿意が起きたり、我慢が難しく漏れてしまったりすることがあります。主な症状は頻尿、尿意切迫感、尿失禁などで、高齢者だけでなく、40代ごろから悩む方が増えてくるトラブルです。
原因は主に以下の3つに大別できます。
・排尿筋の過活動
膀胱を収縮させる筋肉が活動しすぎること(過活動膀胱)で、尿を溜めておけなくなります。
・尿道括約筋の収縮低下
尿道の入り口の筋肉が十分に収縮しないことで、尿が漏れやすくなります。
・膀胱容量の低下
間質性膀胱炎などをきっかけに膀胱が尿をためられるスペース自体が小さくなってしまい、今までよりも排尿の間隔が短くなってしまいます。
蓄尿障害は生活の質(QOL)を大きく下げやすいトラブルであり、薬物療法や行動療法に加え、必要に応じてカテーテルの使用が検討されます。
排尿障害(尿をすべて出せないタイプ)の症状と原因
排尿障害とは、膀胱に尿が残ってしまい、スムーズに排尿できない状態を指します。主な症状は、尿の勢いが弱い、排尿に時間がかかる、残尿感がある、尿が出にくい、溢流性尿失禁(あふれて漏れる)などです。膀胱に尿が残り続けると、腎機能の低下や尿路感染症(UTI)の原因になるため注意が必要です。
原因としては以下のようなものが挙げられます。
・尿道の狭窄や閉塞
前立腺肥大症、尿路結石、腫瘍などによって尿道が狭くなったり、塞がったりして、尿が出にくくなります。男性に多く、加齢とともに頻度が上がります。
・膀胱の収縮力の低下
糖尿病性神経障害、脊髄損傷、脳疾患、加齢によって膀胱が収縮する力が弱くなり、尿を排出しにくくなった状態です。
・神経のネットワークがうまく働かないタイプ(神経因性膀胱)
脳梗塞後や脊髄損傷、多発性硬化症、骨盤内手術後など、神経の伝達障害によって尿が排出しにくくなります。
排尿障害は、蓄尿障害以上に自己導尿やバルーンカテーテルが必要になるケースが多いです。原因の見極めと、適切な排尿管理が欠かせません。
排尿障害の対処法:「バルーンカテーテル」と「自己導尿」という選択肢
排尿障害の対処法:「バルーンカテーテル」と「自己導尿」という選択肢
排尿障害に対する治療・ケアには、薬物療法やリハビリテーションに加えて、カテーテルを使った排尿管理が選択肢となります。とくに、膀胱に尿が残り続ける状態(尿閉・高度の残尿)では、腎機能の低下や感染症を防ぐため、早期の対応が必要です。
排尿管理の方法には大きく 「バルーンカテーテル(膀胱留置用カテーテル)」 と 「自己導尿(間欠導尿)」 の2種類があります。どちらも尿を安全に体外へ排出するための大切な手段ですが、目的や生活スタイル、病状によって使い分けられています。
バルーンカテーテルとは?仕組み・痛み・起こりやすいトラブル
バルーンカテーテルとは?仕組み・痛み・起こりやすいトラブル
バルーンカテーテルと言ったとき、多くの場合は「膀胱留置用カテーテル」を指します。尿を持続的に体外へ排出するために、尿道口から膀胱内に留置したままにするタイプのカテーテルです。水で膨らませた「バルーン」という構造を持ち、カテーテルが抜けてこないように固定されています。
自力で排尿できないケース、残尿が高度にあるケース、術後などで排尿管理が必要なケースなど、医療の現場だけでなく在宅でも広く使用されています。
膀胱留置用カテーテルの種類と仕組み
よく使われる尿道留置タイプの膀胱留置用カテーテルと、膀胱瘻(ぼうこうろう)カテーテルについて、特徴や違いについてまとめました。
膀胱留置用カテーテル |
膀胱瘻カテーテル |
|
挿入部位 |
尿道から膀胱へ挿入 |
腹部に穴を開け、膀胱へ直接的に挿入 |
主な用途 |
・術後などの一時的な管理 ・寝たきりの方の排尿管理 |
・尿道に狭窄などの問題がある場合の排尿管理 ・長期的な排尿管理 |
メリット |
・挿入が容易 |
・痛みや違和感が少ない ・尿道損傷のリスクがない ・膀胱留置用カテーテルより感染症のリスクが少ない |
デメリット |
・挿入時の痛み、違和感がある ・感染症のリスクがある |
・尿もれや皮膚トラブルの可能性がある ・瘻孔が閉塞することがある |
脊髄や神経系の損傷により長期的な排尿管理が必要な方、尿道にトラブルのある方などは、膀胱瘻カテーテルが選択されることがあります。
膀胱留置用カテーテル挿入時の痛みと対処法
膀胱留置用カテーテル挿入時には、尿道が圧迫されていてカテーテルが通りにくい、カテーテルが太すぎる、挿入の角度によって刺激を受けるなどの理由で、痛みや違和感が生じることがあります。
痛みがある場合は、次のような対処法をとってみましょう。
- リドカイン(痛み止め)含有の潤滑ゼリーを使用
- カテーテルサイズを変更する
- リラックスした姿勢をとる
- 膀胱の環境を整える(尿路感染症があると痛みが増えやすい)
女性と比べて尿道が長い男性では、痛みや抵抗感が出やすいです。痛みの訴えを軽視せず、しっかりと対処法をとることが重要です。
膀胱留置用カテーテルのメリット:排尿管理と生活の質の向上
カテーテルを留置したままにすることで、本人・介助者の双方にとって多くのメリットが得られます。
- 尿を確実に排出できる
- 失禁がなくなる
- 失禁による不快感や皮膚トラブルを軽減できる
- 尿の状態を観察しやすい
- 排尿量を正確に把握できる
- 介護負担が軽減する
膀胱留置用カテーテルのデメリットと知っておくべきトラブル・合併症
膀胱留置用カテーテルは、一人ひとりの状態によって必要なものではありますが、デメリットや合併症のリスクも存在します。知った上で、適切に管理することが大切です。
- 尿路感染症
- 尿道の炎症や損傷(膀胱留置用カテーテルの場合)
- チューブの詰まりや閉塞
- 長期留置に伴う膀胱容量の低下や収縮不良
- 生活に制限が生じることがある
メディカルジャパン内 介護・福祉EXPOには、
排泄補助製品や昇降製品、歩行補助製品なども出展
自己導尿とは?膀胱留置用カテーテルとの違いと注意点
自己導尿とは?膀胱留置用カテーテルとの違いと注意点
自己導尿は、必要なときだけカテーテルを尿道に挿入し、膀胱を空にしたらその都度カテーテルを抜き取る方法です。膀胱留置用カテーテルのように留置はしません。
自己導尿の方法とカテーテルの種類
自己導尿のカテーテルには大きく3種類がありますが、使用方法は同じです。
特徴 |
|
使い捨てカテーテル |
1回ごとに使い捨てるタイプで、誰でも衛生的に使用できる。 |
再使用型カテーテル |
水洗い・消毒をおこなうことで約1か月使用できるタイプ。手間はかかるが、コストを抑えることができる。 |
親水性カテーテル |
潤滑剤が塗布されているため、手間が少なく、手技に慣れていない方でも少ない痛みで使いやすい。 |
【使用方法】
自己導尿は次の手順でおこないます。
- 手洗いをしたのち、衣服を下げ、カテーテルを挿入しやすい体勢をとる
- 尿道口を清潔にする
- カテーテルを清潔に準備(必要な場合は、潤滑剤を塗布する)
- カテーテルを尿道へ挿入
- 尿が出なくなるまで待つ
- ゆっくりカテーテルを抜去する
- カテーテルを処理(使い捨ての場合は廃棄、再使用の場合は洗浄)
自己導尿のメリット:自立とQOL維持の可能性
自己導尿には多くのメリットがあります。
- 留置型のカテーテルに比べ、尿路感染症を起こしにくい
- 自然な排尿リズムを維持した生活ができる
- 膀胱留置用カテーテルと比較すると身体的、心理的負担が少ない
- 膀胱機能を維持できる
特に神経因性膀胱、前立腺手術後、糖尿病性神経障害の方などに有効で、「自分らしい生活」を保つための大切なケアです。
自己導尿のデメリットと注意すべきリスク・ケアのポイント
メリットが多い一方で、デメリットや注意点も把握しておく必要があります。
- 自分で手技をおこなう必要がある
- 外出時の準備、スペースの問題がある
- コストがかかる
- 尿道損傷や出血、感染症のリスクがある
女性の場合、自分では尿道が見えにくく、手技の獲得が難しいかもしれません。また、手指の動きの悪化、視力の低下などで自己導尿ができなくなってしまう方もいます。
膀胱留置用カテーテルと自己導尿:個々に合った選択肢を見つける比較表
膀胱留置用カテーテルと自己導尿:個々に合った選択肢を見つける比較表
ここまでに解説した内容について、簡単な比較表を作成しました。
膀胱留置用カテーテル |
膀胱瘻カテーテル |
自己導尿 |
|
方法 |
尿道から膀胱へカテーテルを挿入し、留置しておく |
腹部に穴を開け、膀胱へ直接的にカテーテルを挿入し、留置しておく |
排尿をしたいときに尿道へカテーテルを挿入し、その都度抜き取る |
感染リスク |
高め |
膀胱留置用カテーテルと比較すると低い |
膀胱留置用カテーテルと比較すると低い |
医療者による管理 |
医療機関での交換などが必要 |
医療機関での交換などが必要 |
自分で管理できる |
生活の自由度 |
生活に制限が出ることがある |
生活の制限は少なめ |
自然に近い生活を送りやすい |
主なトラブル |
・感染症 ・尿道損傷 ・痛みや違和感 |
・尿もれ ・皮膚トラブル ・瘻孔閉塞 |
・尿道損傷 ・痛みや違和感 |
向いている人 |
・寝たきりなど、介助の必要な方 ・急性期の治療中の方 |
・尿道狭窄などの問題がある方 ・長期的な排尿管理が必要な方 |
・手技を獲得できる方 ・生活の自由度を高く維持したい方 ・残尿が多い方 |
費用の目安 |
月数千円程度 |
月数千〜10,000円程度 |
月5,000〜20,000円程度 |
どちらの方法が適しているかは、医師や看護師などの専門家と相談しながら決めるのが最善です。
【患者さん・ご家族・介助者向け】快適な日常を送るための排尿ケア
【患者さん・ご家族・介助者向け】快適な日常を送るための排尿ケア
排尿ケアは、ただ尿を出す・ためるといった身体機能だけの問題ではありません。生活の質(QOL)や安心感に大きく関わるため、日常生活での工夫や正しい知識がとても重要です。ここでは、ご家庭・病院・施設等で今日からできる排尿ケアの方法を、わかりやすく紹介します。
毎日の生活で実践できる排尿ケアの基本と感染予防
清潔な操作と感染予防は排尿ケアの基本です。慣れてくると、手順を疎かにしてしまいたくなることもあるかもしれませんが、1つ1つを丁寧におこないましょう。
・手洗いを徹底
導尿前後、尿バッグ交換前後は、必ず石けんで手を洗うことが大切です。
・カテーテルや尿バッグを清潔に保つ
バッグは常に膀胱より低い位置に固定します。不潔になってしまうため、床には置かないようにします。
・十分な水分をとる
水分をとらず尿量が少なくなると、細菌が増えやすいです。ただし、持病で水分量の制限がある場合は、医師の指示に従ってください。
・交換時期の遵守
カテーテルの交換頻度を守ることが大切です。また、自己導尿の使い捨てカテーテルを使い回すことはやめましょう。
・感染のサインを見逃さない
発熱、尿のにごり、下腹部痛などは、感染症のサインかもしれません。
外出・旅行・社会活動を楽しむための工夫
排尿ケアをしていても、準備を整えれば外出や旅行を十分に楽しめます。
・携帯用導尿キットの活用
個包装タイプや処理袋付きキットが便利。
・トイレ検索アプリを利用
バリアフリートイレや多目的トイレなど、カテーテルの操作をするために十分なスペースのあるトイレの位置を、事前に把握しておくと安心です。
・予備用品を持つ
不足しないように、多めに物品を用意しておきましょう。
長距離移動の際は、トイレ時間をあらかじめ計画しておくと安心です。
医療費助成制度と相談窓口の活用
衛生的にカテーテル管理を続けていくためには、費用面が気になる方も多いでしょう。基本的には、医療保険が適用されるため、自己負担額は1〜3割となり、膀胱留置用カテーテルで月々数千円程度、自己導尿で5,000円〜20,000円程度が目安となります。高額療養費制度も利用可能です。
膀胱機能障害などで身体障害者手帳の交付を受ければ、自治体の福祉用具給付や医療費助成制度の対象となる場合もあります。(自治体により、負担額は異なります。)
お困りの場合は、以下のような場所でご相談ください。
- お住まいの地域の福祉事務所
- かかりつけの医療機関
- 医療ソーシャルワーカー
- 地域包括支援センター
- 訪問看護ステーション
【医療関係者向け】排尿ケア製品の進化と最新技術
【医療関係者向け】排尿ケア製品の進化と最新技術
排尿ケア製品も進化し、患者さん本人及び介護者の負担軽減、ケアの効率化につながる技術も登場しています。
・カテーテルの進歩
抗菌コーティング製品、親水性カテーテルなどの登場により、衛生面や安全性が向上してきました。
・残尿評価のデバイス
携帯型のスキャナーの精度が向上することで、ご自宅でも適切な排尿ケアがしやすくなります。膀胱機能の訓練にも活用できます。
・排尿管理へのIoTの活用
尿量をセンサーでリアルタイムに測定し、一人ひとりの蓄尿サイクルを把握することで、適切なタイミングで導尿やトイレ誘導、オムツ交換などをおこなうことができるようになります。
まとめ:メディカルジャパン展示会で最新情報を体験!
まとめ:メディカルジャパン展示会で最新情報を体験!
排尿トラブルには「ためられない」「出しきれない」という2つのタイプがあり、いずれの場合も適切な排尿ケアが必要です。
膀胱留置用カテーテルと自己導尿は、生活状況や身体機能に合わせて、適したものを選択することが重要です。また、清潔操作の遵守や水分摂取など、日常の小さな工夫が、安全性を保つために必要になります。
メディカルジャパン展示会では、医療や介護にまつわるさまざまな製品やサービスをご紹介しています。排尿ケア用品や、最新の排尿管理デバイスなどにご興味のある方は、ぜひご来場ください
メディカルジャパン内 介護・福祉EXPOには、
排泄補助製品や昇降製品、歩行補助製品なども出展
監修者情報
監修:村上 知彦(むらかみ ともひこ)
性別:男性
経歴:長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て 現在は 医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科
免許・資格:
日本泌尿器科学会専門医(第20130152号) / 日本泌尿器科学会指導医(第2018013421号) / 日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医
所属:薬院ひ尿器科医院
専門領域:医療 > 外科・内科以外の診療科 > 泌尿器科
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