病院経営に不可欠なDXとHR HITO病院・石川氏
「メディカルジャパン東京」講演より

病院経営に不可欠なDXとHR
HITO病院・石川氏
「メディカルジャパン東京」講演より

 10月に千葉市の幕張メッセで開催された「メディカルジャパン東京」(主催︓RX Japan)には3日間で約1万5,300人の来場者があった。そこでは医療や介護、薬局に関する全84講演(出展社セミナー含む)も行われた。CBnewsは、病院経営のヒントになる4つの講演を連載で紹介する。1回目は「医療の未来を拓く病院DX ~企業とともに歩む持続可能な医療のかたち~」をテーマに講演した社会医療法人石川記念会HITO病院理事長の石川賀代氏。

 「今後の病院経営に不可欠な取り組みは『DX』と、職員を人的資源として捉えてその最大化を目指す『HR』(ヒューマンリソース)の推進だ」と石川氏は強調する。この2つを進めなければ働き手が集まらず、組織を変革することは難しいという。

 HITO病院がDX化に着手したのは2017年。医師の引き揚げにより脳神経外科の常勤医が1人だけになるという事態に陥ったからだ。旧病院名の石川病院の時から脳神経外科領域で地域の信頼を得ていたが、この危機な状況で通常医療と救急医療にどう対応するかという大きな問題に直面した。

 そんな時、残った脳神経外科の常勤医から「他職種の関係スタッフにスマートフォンを10台持たせてほしい」という要望があり、それに応じる形で院内でのスマホ活用の実証が始まった。スマホにはチャットツールを導入。これにより多職種間の情報共有がより迅速に行えるようになり、意思決定が図れるようになった。

 効果を実感した同院ではリハビリテーション部にスマホを100台導入し、カルテの入力時間の削減などに取り組んだ。その結果、リハビリ職が本来の業務に専念できる時間がつくれるようになったほか、リハビリの単位数も増えてスマホのレンタル料を賄えるようになった。その後、日勤の各職員に計300台貸与したところ、効率的な働き方や残業時間の削減につながった。今では職員1人につき1台、計600台を貸与している。

 石川氏は「DXを進めるに当たって最初から費用対効果は出ない」と指摘する。小さな規模で実証を始めて効果があったり、うまくいったりした取り組みを横展開して徐々に広げていくことがポイントだという。

 同院ではスマホを通じたチームチャット機能の活用により、スタッフの働き方も大きく変わった。チャットでのコミュニケーションには、▽場所や時間に縛られない▽直接人に会う必要がない▽画像や動画も共有できる-などのメリットがある。そのため、特にチーム医療で効果を発揮し、医師から他の職種にタスクシフトするケースが増えた。

 また、チャットの活用により看護師はほぼベッドサイドでケアに専念できるようになった。ナースステーションと病室を行き来することがなくなったため、看護師1人の1日の移動距離が4-5キロ減り、時間に換算すると1人当たり1日約60分短縮された。さらに、申し送りの方法をチャットに変えたことで1人につき1日100分程度の時間を創出。その分を患者のケアや他のスタッフの教育、自己研鑽などに充てられるようになった。

 何のためにDXを進めるのか。業務効率化のためでもあるが、「職場環境を良くして職員に『HITO病院で働けて良かった』と思ってもらい、働く意味を見つけてもらうためだ」と石川氏は強調する。今後も減っていく医療の担い手に選ばれる病院になるにはDXとHRを一緒に進めることは病院経営に欠かせないという考えも示した。

【CBnews取材記事より引用】