「人」「データ」の一元化で入院日数を短縮 恵寿総合病院・神野氏
「メディカル ジャパン 大阪」講演より

「人」「データ」の一元化で入院日数を短縮 
恵寿総合病院・神野氏
「メディカル ジャパン 大阪」講演より

 3月に大阪市で開催された「メディカル ジャパン 大阪」(主催:RX Japan)における、病院経営のヒントになる4つの講演をCBnewsでは連載。3回目は「病院DXによる働き方改革・革命」をテーマに講演した、石川県七尾市の社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長補佐の神野正隆氏を紹介する。

 急性期⼀般⼊院料の「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)が厳格化し、看護必要度の要件が満たしづらい高齢患者が増える中、ベッドコントロールのマネジメントがより重要に。恵寿総合病院は「入退院管理センター」を通じて行っているベッドコントロールの取り組みを紹介した。

 「入退院調整は指揮者のいないオーケストラみたいだった」。以前のベッドコントロールを行う院内の状態を、こう振り返った神野氏。主治医や担当の看護師、医療ソーシャルワーカー(MSW)によってばらつきのあった退院や院内の回復期病棟への転棟の基準をルール化しようと2022年4月に設置されたのが「入退院管理センター」だ。

 神野氏がセンター長を兼務する入退院管理センターは、副センター長の2人(社会福祉士と看護師)を含め20人超のメンバーで構成。入退院調整に関わる責任と権限をセンターに一元化した上で、入退院支援看護師が、入院予定患者に入院前から介入を開始し、前方連携は地域連携課の事務職員が、後方連携は医療福祉相談課のMSWがそれぞれ中心となり、入院前から入院中、退院後まで院内外の医療介護サービスのフローに切れ目がないように密に連携を取り、マネジメントしている。

 入退院管理センターの効果は表れた。神野氏によると、センター設置前の21年の平均在院日数は15.4日だったが24年には11日に短縮。入院単価は約40%増の7万4,280円になり、1カ月当たりの新規入院患者数も約25%増の590人になったという。

 入退院管理センターの土台を支えているのがデータ活用だ。全入院患者についてリアルタイムでDPC入院期間、日当点、看護必要度といった入退院に関するありとあらゆる指標をすぐに見られるようなモニターを開発し、データを徹底活用した入退院の調整を実施している。「主治医は医師にしかできないこと(方針決定、治療、転院・退院の許可)に集中し、患者に向き合える時間を増やすようにしたかった」と神野氏は話す。

 データの活用は入退院にとどまらない。23年にはデータセンターを開設し、多くの部署に点在していたデータを一元管理し、法人内の各施設各部署に関わるデータを徹底的に可視化することで診療や業務に活用する仕組みを構築した。またデータセンターの一部門である「DATA LAB」では、必要な情報の可視化以外に定型業務の自動化であるRobotic Process Automation(RPA)の設計やデータ分析、データを活用した業務改善支援も行っている。130以上のロボットを稼働させ、年間1万2,000時間以上の業務負担軽減につなげている。23年に導入したモバイル電子カルテ搭載の業務用iPhoneでは、チャット機能で自分や相手の時間を縛らずコミュニケーションがとれ、さらにあらゆる情報のやり取りを行い、1対1の情報共有から1対多での情報共有を進めた。

 神野氏は働き方改革や経営の改善にはデータ活用が欠かせないとし、「Data Driven Healthcare、客観的なデータに基づく質の高い医療・介護を進める」と語った。

【CBnews取材記事より引用】